Alexei Kitaevによるキタエフ模型の提案から15年、その美しい厳密解に端を発したキタエフ量子スピン液体の研究は、理論と実験の協働により急速な進展を遂げています。候補物質に対する実験的な取り組みと、数値計算を含む理論研究が精力的に進められ、研究の舞台は、マヨラナ励起の「観測」から、トポロジカル量子計算の実現に向けた「創出と制御」という新しいステージへと移りつつあります。この機を捉え、本研究分野のフロントランナーを集結して最先端の情報交換と緊密な議論を行うことで、本研究分野のさらなる発展と新展開を探ることが本研究会の目的です。
2021年8月3日(火)、4日(水)、5日(木)の13:00-17:30(最終日のみ17:00まで)
Zoomを用いてオンラインで行います。
事前参加登録が必要です(8月2日(月)正午まで)。こちらから登録をお願いします。
Zoomのリンクは、参加登録していただいた方に8月2日午後に配信する予定です。
Slackを用いたディスカッションスペースも用意する予定です。
(8月2日追記) 参加登録をいただいた方々にZoomとSlackの情報をお送りいたしました。もし登録済みにもかかわらず届いていない方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
会議参加費無料
敬称略。五十音順。
名前 | 所属 |
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今井 良宗 | 東北大学 大学院理学研究科 |
岩井 伸一郎 | 東北大学 大学院理学研究科 |
宇田川 将文 | 学習院大学 理学部 |
大久保 毅 | 東京大学 大学院理学系研究科 |
川野 雅敬 | 東京大学 大学院総合文化研究科 |
佐藤 正寛 | 茨城大学 大学院理工学研究科 |
芝内 孝禎 | 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 |
張 成燻 | 京都大学 ESCIB |
鈴木 博人 | 東北大学 学際科学フロンティア研究所 |
瀧川 大地 | 大阪大学 大学院基礎工学研究科 |
仲澤 一輝 | 東京大学 大学院工学系研究科 |
那須 譲治 | 横浜国立大学 大学院工学研究院 |
廣井 善二 | 東京大学 物性研究所 |
福井 毅勇 | 東京大学 大学院工学系研究科 |
藤本 聡 | 大阪大学 大学院基礎工学研究科 |
町田 理 | 理化学研究所 創発物性科学研究センター |
松尾 貞茂 | 理化学研究所 創発物性科学研究センター |
松田 祐司 | 京都大学 大学院理学研究科 |
山地 洋平 | 物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 |
山田 昌彦 | 大阪大学 大学院基礎工学研究科 |
大久保 毅 (東大理)
加藤 康之 (東大工)
那須 譲治 (横国大工)
三澤 貴宏 (BAQIS)
求 幸年 (東大工)
8月3日(火) | 座長:求 幸年(東大工) | ||
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13:00-13:05 | はじめに | ||
13:05-13:35 | A1 | 松田 祐司(京大理) | α-RuCl3の強磁場熱輸送現象 |
キタエフ候補物質α-RuCl3の強磁場熱輸送現象の最近の結果を報告する。特に最近報告された熱伝導度の量子振動の有無と半整数熱量子ホール効果が消失する磁場での1次相転移の観測について議論する。
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13:35-14:05 | A2 | 宇田川 将文(学習院大理) | Kitaevスピン液体におけるマヨラナ素励起の局所検出 |
本講演ではKitaevスピン液体におけるマヨラナゼロモードを実空間で検出する方法を提案する。Majoranaゼロモードを検出する困難は本質的に、この素励起に結合する局所的な観測量が存在しない事に起因する。本講演では、Kitaev模型自身にとっては外部の自由度である電荷をあらわに考慮することにより、この困難を克服するアイデアを提案する。具体的には、2次元薄膜状に精製したKitaevスピン液体のサンプルをSTM探針で探査するセットアップを考え、Majoranaゼロモードを伴うvison励起が探針付近に存在する場合としない場合での微分コンダクタンスの振る舞いの差を理論的に考察する。微分コンダクタンスはMott絶縁体極限におけるKitaev模型の動的なホール相関関数を用いて書き表すことができる。解析の結果、ホール相関関数から得られる微分コンダクタンスはvisonの存在下では、分裂したMajoranaゼロモードに起因するダブルピーク構造を示し、その振る舞いに基づいてvisonの位置を検出することが可能であることがわかった。本講演では共鳴ピークの磁場依存性とvison励起のエネルギー特性の詳しい解析結果を交えて報告する。
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14:05-14:35 | A3 | 張 成燻(京大ESCIB) | キタエフスピン液体の局所擾乱によるボルテックス制御 |
キタエフスピン液体に局所的なジャロシンスキー・守谷相互作用を加えることによって、Z2ボルテックスを生成・制御することができる。RuCl3の第一原理計算とともに、fusionやbraidingなど、実践的な量子トポロジカル計算について理論的な提案を行う。
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14:35-14:50 | 休憩 | ||
14:50-15:20 | A4 | 岩井 伸一郎(東北大理) | α-RuCl3における逆ファラデー効果と超高速電荷ダイナミクス |
α-RuCl3のモットギャップ内の遷移(スピン軌道励起子)を円偏光フェムト秒パルスで励起することにより、パルス幅(~100fs)程度の時間で応答する面直磁化の発生(逆ファラデー効果)を観測した。この超高速磁化は、TNを挟んでAF秩序のあるなしにかかわらず観測されるが、<TNでは約20%程度減少し、逆ファラデー効果による面直磁化がAF秩序と競合しているように見える。過渡磁気光学スペクトル(偏光回転、楕円率)の励起波長依存性、および100fs, 6fsパルスを用いて測定した過渡反射測定の結果から、ギャップ内励起下における逆ファラデー効果と電荷ダイナミクスの機構について考察したい。
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15:20-15:50 | A5 | 佐藤 正寛(茨城大理工) | キタエフスピン液体における非線形光学応答 |
キタエフ模型は理論的に量子スピン液体を基底状態として保有することが厳密に示されている。また実験的には多数のキタエフ磁性体候補物質が合成および探索されており、候補物質α-RuCl3では量子スピン液体の実現を強く支持する量子化された熱ホール伝導度が観測されている。すなわち、キタエフ磁性体は実験と理論両面において、量子スピン液体の魅力的な研究舞台を提供している。このような中で、我々は、キタエフ磁性体を舞台として、光物性科学と量子スピン液体の融合を図る理論研究を進めている。本講演では、高強度THzレーザーをキタエフスピン液体に照射した際の非線形光学応答やフロケエンジニアリングについて報告したい。
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15:50-16:20 | A6 | 瀧川 大地(阪大基礎工) | キタエフ・カイラル・スピン液体における無散逸スピン流機構 |
α-RuCl3はキタエフスピン液体状態の有望な候補物質であり、トポロジカルな特徴である量子熱ホール効果の量子化が観測されている。しかし、キタエフ 模型による予想とカイラルマヨラナフェルミオンの存在証拠との関係は未だ議論がなされている。本研究では直接的な存在証拠として、キタエフ模型におけるスピンゼーベック効果 でのDrude Weightの普遍的なスケーリングが示すカイラマヨラナエッジモードを観測することを提案する。スピンゼーベック効果とは外部から温度勾配を設けることによってスピン流が流れる現象である。本研究ではカイラルエッジモードに後方散乱がないことを反映してスピン相関長が非常に短いにもかかわらず、無散逸で弾道的なスピン流がエッジに生成されることが分かった。このことは実験的に観察できるだけでなく、キタエフ材料のスピントロニクスにおける応用への可能性を示唆する。
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16:20-16:50 | A7 | 川野 雅敬(東大総合文化) | Kitaev相互作用が誘起するマグノンのスピンテクスチャ |
我々が近年構築した、反強磁性絶縁体におけるマグノン励起を電子系とのアナロジーで捉える理論的枠組みを紹介する。電子系においては、スピン軌道相互作用が電子のスピンと運動を結合させ、運動量空間にスピンテクスチャを誘起する。これにより電場を用いた電子スピンの制御が可能となり、デバイス応用が期待されるが、Joule熱の発生が大きな障壁となる。今回我々は、Joule熱の発生しない反強磁性絶縁体においても、Dzyaloshinskii-Moriya相互作用やKitaev相互作用が、反強磁性絶縁体の擬スピン自由度とマグノンの運動を結合させ、運動量空間にマグノンのスピンテクスチャを誘起することを見出した。さらに、Green関数法に基づいて構成した有効ハミルトニアンから、マグノンのスピンテクスチャが生じる一般的な条件を明らかにした。本講演では、この理論的枠組みを用いて、特にKitaev相互作用が誘起するマグノンのスピンテクスチャについて詳しく議論する。
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16:50-17:30 | ブレークアウトセッション | ||
8月4日(水) | 座長:三澤 貴宏(BAQIS) | ||
13:00-13:30 | B1 | 藤本 聡(阪大院基礎工) | トポロジカル超伝導とキタエフ・スピン液体におけるマヨラナ粒子:共通項と差異 |
トポロジカル超伝導体とキタエフ・スピン液体におけるマヨラナ物理(非局所相関、テレポーテーション、非可換統計等)の共通項と相違点,およびそのトポロジカル量子計算への応用についてレビューする.さらにキタエフ物質で期待される新規トポロジカル相等に関する最近の我々のグループの研究成果についても紹介する.
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13:30-14:00 | B2 | 町田 理(理研CEMS) | 走査型トンネル顕微鏡を用いたトポロジカル超伝導体におけるマヨラナ粒子探索 |
トポロジカル超伝導体は, 固体中でマヨラナ準粒子を実現するための舞台として近年精力的に研究が行われている系である.トポロジカル超伝導体におけるマヨラナ準粒子がエッジや渦糸芯に局在し,マヨラナゼロモードと呼ばれるゼロエネルギー励起を有することから,局所的に分光測定が可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いたマヨラナ準粒子の検出実験が盛んに行われてきた. しかしながら,マヨラナ準粒子の存在を証明する確固たる証拠が得られていないのが現状である.これは実験のエネルギー分解能がマヨラナゼロモードと自明な束縛状態を区別するのに十分でないことに起因する. そこで我々は極めて高いエネルギー分解能を有する超低温STMを開発し[1],これを用いてトポロジカル超伝導体におけるマヨラナ準粒子の検出に挑戦してきた[2]. 講演では,マヨラナ準粒子の存在が期待されている系におけるマヨラナゼロモードの有無の検証実験を紹介するとともに,新たなトポロジカル超伝導体候補物質の開拓に関する最近の結果も紹介する.
[1] T. Machida et al., Rev. Sci. Instrum. 89, 093707 (2018) [2] T. Machida et al., Nat. Mater. 18, 811 (2019) |
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14:00-14:30 | B3 | 松尾 貞茂(理研, JSTさきがけ) | 平面ジョセフソン接合どうしの結合の制御 |
近年平面ジョセフソン接合に面内磁場を印加した際にトポロジカル超伝導相が実現可能であるという提案があり、実験的にその兆候が報告されている。我々は最近、この平面ジョセフソン接合に着目し、二つのジョセフソン接合が結合した際の物理に関する研究を行っている。本講演ではこの結合に起因した超伝導輸送現象と、結合により形成されるアンドレーエフ分子状態の分光結果を紹介する。
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14:30-14:45 | 休憩 | ||
14:45-15:15 | B4 | 芝内 孝禎(東大新領域) | α-RuCl3における精密比熱測定によるマヨラナギャップの観測 |
キタエフ量子スピン液体の候補物質であるα-RuCl3の低エネルギー励起を、面内磁場回転比熱測定により調べた。その結果、磁場角度に大きく依存したエネルギーギャップが観測され、その角度依存性および磁場依存性は、キタエフスピン液体状態で期待されるものと一致した[1]。また、10テスラ以上の高磁場では、結晶の持つ6回回転対称性を破る2回対称の角度依存性が現れ、磁場誘起のネマティック転移の可能性を示唆する結果を得た。
[1] O. Tanaka et al., arXiv:2007.06757. |
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15:15-15:45 | B5 | 山田 昌彦(阪大基礎工) | KΓ模型におけるネマティック・スピン液体とケクレ・スピン液体 |
KΓ模型はα-RuCl3をはじめとするキタエフ候補物質の低エネルギー有効模型として知られているが、その相図には謎が多い。今回はこの模型に対する新たなアプローチとしてΓ項に関する三次摂動を行い、導出される相互作用のあるマヨラナ多体模型について基底状態相図を調べた。平均場近似と厳密対角化の組み合わせにより今まで知られていなかった新たなスピン液体相であるネマティック・スピン液体相とケクレ・スピン液体相を発見し、これらの相が小さいΓでも生じることを発見した。
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15:45-16:15 | B6 | 大久保 毅(東大理) | 拡張キタエフ模型における熱ホール伝導度の数値的研究 |
非対角相互作用を含むキタエフ模型の磁場中での熱ホール伝導度をテンソルネットワーク法を中心とした数値計算により解析した結果を紹介し、非対角相互作用の種類や符号に応じて、熱ホール伝導度の温度依存性、磁場依存性が顕著に変化することを議論します。
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16:15-16:45 | B7 | 仲澤 一輝(東大工) | 交代磁場下のスピン液体が示す非対称なマヨラナ励起と非相反熱輸送 |
キタエフ模型は磁場下でマヨラナチャーン絶縁体となることが知られている.我々は,交代磁場も同時に印加するとマヨラナ励起スぺクトルが非対称になり,マヨラナフェルミ面が現れることを明らかにした.また,マヨラナ励起に対する一様磁場と交代磁場の依存性を系統的に調べることで,多様なマヨラナバンド構造があらわれ,それによる線形・非線形熱輸送係数の特徴的な磁場依存性から,マヨラナ励起の検出ができること示した.
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16:45-17:30 | ブレークアウトセッション | ||
8月5日(木) | 座長:加藤 康之(東大工) | ||
13:00-13:30 | C1 | 今井 良宗(東北大理) | キタエフスピン液体RuCl3に着目した新物質開発 ~フィリング制御およびバンド幅制御~ |
ハニカム化合物α-RuCl3はキタエフスピン液体の最有力候補物質として,近年盛んに研究が行われている.しかし,現実には結晶構造の歪みなどに起因する非キタエフ相互作用によって低温で磁気秩序を形成し,キタエフスピン液体状態は,磁場下でのみ実現する.本講演では,キタエフスピン液体に近い新しい電子状態を探索するべく,我々が進めてきた新物質開発研究に関して得られた成果を紹介する.
1. ソフト化学的な合成手法を用いて,ハニカム層間にアルカリ金属イオンと水分子を挿入した,AxRuCl3・yH2Oを開発した.これは,RuCl3に対する電子ドーピングとみなすことができる.電気抵抗率は,200-260Kにおいてヒステリシスを伴う異常を示す.これは電荷秩序の形成に起因するものと考えている.α-RuCl3において,7-14Kで見られた反強磁性転移は,電子ドーピングによって抑制され,反強磁性転移温度は減少することがわかった. 2. 高圧合成法を用いて,ハニカム格子を持つ新物質RuBr3とRuI3を発見した.これらは,α-RuCl3に対するバンド幅制御に相当する.RuBr3は,空間群R-3であり,理想的なハニカム格子を持つ.TN=35Kでジグザグ型の反強磁性秩序を形成する.一方,RuI3は,空間群P-31cであり,2K以上では磁気秩序を形成しない. |
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13:30-14:00 | C2 | 廣井 善二(東大物性研) | キタエフ物質OsxCl3と(Ru,Os)Cl3に関する研究 |
キタエフ物理を実現する可能性のある物質の探索が行われている。われわれはOsxCl3を合成し、Os原子のナノハニカムドメインからなることを見出した。さらに、RuCl3 への60%までのOs置換を行い、中間組成でのみダイマー相が現れること、それ以外の組成で何らかの短距離磁気相関が発達することを観測した。
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14:00-14:30 | C3 | 那須 譲治(横国大工) | キタエフ量子スピン液体に対する乱れの効果 |
本講演では、キタエフ量子スピン液体に対する磁気励起やラマン散乱、輸送特性に対する乱れの効果について、理論計算の結果に基づいて、分数励起との関係を議論する。
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14:30-14:45 | 休憩 | ||
14:45-15:15 | C4 | 福井 毅勇(東大工) | 汎関数繰り込み群を用いたキタエフスピン液体研究 |
キタエフ磁性体の数値計算手法としては、マヨラナフェルミオン表示による量子モンテカルロ法が大きな威力を発揮し、有限温度や磁場中での物性を解き明かしてきた。しかしながら、tricoordinateでない格子系や非キタエフ型の相互作用をもつ模型の計算への適用は難しい。キタエフ模型のような強いフラストレーションを有する量子スピン系を扱うことができる他の数値計算手法としては、厳密対角化や密度行列繰り込み群、最近では、テンソルネットワークが用いられている。本講演では、汎関数繰り込み群、とりわけ、Pseudo-Fermion Functional Renormalization Group(PFFRG)と呼ばれる手法を取り上げる。PFFRGは、フラストレートした多くの2体相互作用を持つ量子スピン模型に適用できる、2010年に提案された比較的新しい数値計算手法である。これまでもキタエフスピン液体研究に応用され、一定の成功を収めてきた。講演では、講演者の行なった研究も含めて、これまでのPFFRGを用いたキタエフ量子スピン液体研究や、最近の進展についても紹介する。
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15:15-15:45 | C5 | 鈴木 博人(東北大学際フロンティア) | Ru L3端RIXSによるRuCl3の擬スピンハミルトニアンの決定 |
ルテニウム塩化物RuCl3はキタエフ模型実現の最有力候補物質の一つである。スピンの分数化の兆候が様々な実験から示唆されている一方、RuCl3は低温でジグザグ型磁気秩序を示すため、両者を統一的に記述する擬スピンハミルトニアンの決定が必要である。本研究では我々が新規に開発したTender X線領域の共鳴非弾性X線散乱(RIXS)によってRuCl3の励起スペクトルを調べた。擬スピン1/2励起強度の運動量依存性を拡張Kitaev-Heisenberg模型の疑スピン動的構造因子の理論計算と詳細に比較することにより、RuCl3の擬スピンハミルトニアンを決定した。RIXSは散乱断面積が大きく非弾性中性子散乱のように多量の単結晶試料を必要としないため、今回確立したアプローチは拡大するキタエフ磁性候補物質に広く適用可能である。現在建設中の次世代放射光における超高分解能軟X線RIXSを用いた今後の発展の可能性と合わせて議論したい。
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15:45-16:15 | C6 | 山地 洋平(物材機構) | キタエフ量子スピン液体候補物質の電子状態 |
量子スピン液体候補物質として研究が行われてきたイリジウム酸化物およびルテニウムハロゲン化物の遍歴電子有効ハミルトニアンが示す電子状態について報告する。
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16:15-16:20 | おわりに | ||
16:20-17:00 | ブレークアウトセッション |
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