本プロジェクトでは、強相関電子系に現れる奇妙な量子状態のひとつである「量子スピン液体」において、スピン自由度の分数化(fractionalization)によって生じるマヨラナ粒子やエニオンを、自在に創出・制御・観測する手法を理論的に生み出すことを目指しています。これにより、トポロジカル量子計算の基礎理論を確立することが目標です。磁性研究の枠に捉われない広い視点から、量子計算の実現へ向けた理論構築と実験提案を行なっていきます。
本プロジェクトでは、キタエフ型量子スピン液体において分数励起として現れるマヨラナ粒子を、現実の磁性体中に安定に創出し、制御し、観測する手法を理論的に構築することを目指しています。具体的には、以下の点を明らかにすることを目標とします。
トポロジカル量子計算には、空間的に局所的で時間発展を伴うオペレーションが必要となります。したがって、上記の点を明らかにするためには、マクロな測定や平衡状態の性質だけではなく、空間的な局所性や実時間ダイナミクスを解明することが不可欠となります。そこで本プロジェクトでは、格子欠陥や端に代表される空間的な制約や、局所的な格子変形や局所磁場などの空間的に限定された擾乱、様々な磁性体や金属、超伝導体との界面・接合を通じた近接効果やスピン流注入、光や交流磁場や超音波によるフォノン励起といった空間的・時間的入力に対する応答を解明します。そのために、プロジェクトメンバーが有する数値計算手法を相補的に駆使して研究を遂行していきます。
研究代表者:求 幸年(東京大学大学院工学系研究科・教授)
研究分担者:大久保 毅(東京大学大学院理学系研究科・特任准教授)
加藤 康之(福井大学学術研究院工学系部門・准教授)
那須 譲治(東北大学大学院理学研究科・准教授)
特任研究員:福井 毅勇(東京大学大学院工学系研究科・特任研究員)
研究協力者:三澤 貴宏(東京大学物性研究所・特任准教授)
井戸 康太(東京大学物性研究所・助教)
研究会「キタエフ量子スピン液体研究の新展開~マヨラナ励起の創出と制御によるトポロジカル量子計算の実現に向けて~」
日時:2021年8月3日(火)、4日(水)、5日(木)の13:00-17:30(最終日のみ17:00まで)
場所:オンライン開催
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雑誌「固体物理特集号"キタエフスピン液体の新展開"(編集委員:芝内孝禎・遠山貴巳・求 幸年)」
講義「スピン液体の物理 (求 幸年)」第69回物性若手夏の学校 (2024年8月)
e-mail: motome_at_ap.t.u-tokyo.ac.jp
tel: 03-5841-6815, fax: 03-5841-8897
〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻